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コラム

2026/08/24

夏休み明け、学校に戻るのがつらい子どもたちへ/―世界の「学校復帰支援」から考える新学期のメンタルヘルス

岡村 優希

執筆・監修者:

岡村優希(YUUKI OKAMURA)

こんにちは。
認知行動療法カウンセリングセンターです。

夏休みが終わり、新学期が始まる時期。

久しぶりに友達に会えることを楽しみにしている子どもがいる一方で、

と感じる子どもたちもいます。

大人からすると、

「長い休みが終わるのだから、多少憂うつなのは仕方がない」

と思うこともあるかもしれません。

しかし、長期休業明けは、子どものメンタルヘルスを考えるうえで特に注意したい時期です。

文部科学省が2026年7月3日に公表した通知では、2009年以降の児童生徒の自殺者数を日別にみると、8月後半から増加し、特に長期休業明けの9月1日に多くなる傾向が示されています。

さらに北海道・東北地方では、他地域より約2週間早く自殺者数が増える傾向があり、夏休みが終わる時期が1~2週間早いこととの関連も指摘されています。

つまり、大切なのは単純に「9月1日が危険」ということではありません。

長い休みから学校生活へ戻るという大きな環境変化そのものが、子どもにとって負担になる可能性があるということです。

今回は、オーストラリア、イギリス、アメリカ、WHOなどの取り組みを参考にしながら、

「学校に行くか、休むか」だけではない新学期の支援

について考えてみたいと思います。

なぜ夏休み明けは学校に戻るのがつらくなるのか

普段あまり意識しませんが、学校生活には多くの負荷があります。

朝決まった時間に起きる。
身支度をする。
決められた時間までに登校する。
教室に入る。
授業を受ける。
先生から評価される。
同級生と関わる。
集団生活のルールに合わせる。
宿題をする。
テストや進路について考える。

夏休みになると、こうした負荷の一部が一時的に減ります。

ところが新学期になると、それらが一気に戻ってきます。

そのため、子どもに

「どうして学校に行きたくないの?」

と尋ねても、

「分からない」

「なんとなく嫌」

「全部嫌」

という答えが返ってくることがあります。

これは必ずしも本人が話したくないからではありません。

本人の中でも、何が一番つらいのか整理できていないことがあります。

例えば、

など、いくつもの負担が重なっている場合があります。

実際、文部科学省の2026年7月の通知では、2025年の児童生徒の自殺の原因・動機について、学校問題のうち約6割が学業不振や入試、進路に関する悩みだったとされています。

だからこそ、

「学校に行きたくない」という言葉だけを見るのではなく、学校生活のどの部分が負担になっているのかを具体的に理解すること

が重要になります。

オーストラリア|「学校復帰」を本人だけの努力にしない

参考になる取り組みの一つが、オーストラリア・ビクトリア州です。

ビクトリア州では、メンタルヘルス上の問題や自傷などを経験した生徒が学校へ戻る際、単純に「以前と同じ学校生活へ戻す」のではなく、学校、本人、保護者、必要に応じて医療・心理の専門職が協力しながら復帰を計画します。

例えば、

といったことが検討されます。

学校復帰支援の資料には、静かな場所の確保、柔軟な時間割、課題・宿題・試験期限への配慮なども含まれています。

ここから学べる大切なポイントは、

「元気になったら以前と同じように学校へ戻ってください」ではない

ということです。

「どうすれば戻れるのか」を本人だけに考えさせるのではなく、

戻りやすい環境そのものを周囲も一緒につくる

という発想です。

イギリス|「学校に行けない=怠けている」と考えない

イングランド教育省も、社会的・情緒的・メンタルヘルス上の問題によって登校が難しくなっている児童生徒へのガイダンスを公表しています。

ここでも重要視されているのは、

「なぜ登校できないのか」を把握し、その障壁に応じた支援や調整を行うこと

です。

実際の学校での取り組みとしても、一律に通常登校へ戻すのではなく、本人の状態に応じて徐々に学校との接点を増やしていく例が紹介されています。

また、イギリスの一部自治体では、

Emotionally Based School Non-Attendance(EBSNA)

という言葉が使われています。

これは、不安や心理的苦痛などが強くなることで学校へ行くことが難しくなっている状態を捉える考え方です。

例えばダービー市では、支援の中に、

といった内容が含まれています。

つまり、

「行きなさい」

と説得する前に、

「何が行くことを難しくしているのだろう?」

と一緒に考えるわけです。

アメリカ|「学校とのつながり」そのものを守る

アメリカで重視されている考え方の一つが、

School Connectedness(学校とのつながり)

です。

CDC(米国疾病予防管理センター)は、School Connectednessについて、

学校の大人や仲間が自分自身や自分の学びを気にかけてくれている、と生徒が感じられる状態

と説明しています。

興味深いのは、「出席していること」だけではなく、

学校の中に自分の居場所や関係性があること

そのものが重視されている点です。

CDCの調査では、学校とのつながりが強い生徒ほど、メンタルヘルス上の問題や自殺関連指標が低いこととの関連も報告されています。

もちろん、これは「つながりさえあればすべての問題を防げる」という意味ではありません。

それでも、

「毎日登校できているか」

だけではなく、

「この子には、学校で困ったときに頼れる人がいるだろうか」

という視点はとても重要です。

友達をたくさん作る必要はありません。

例えば、

「困ったらこの先生に話せる」

「しんどくなったら保健室へ行ける」

「この場所なら安心して休める」

という人や場所が一つあるだけでも、学校との関係は変わる可能性があります。

WHOも「学校全体」での自殺予防を重視している

こうした考え方は、一部の国だけのものではありません。

WHOの子ども・若者のメンタルヘルスに関するガイダンスでも、学校における自殺予防として、

などが示されています。

つまり、自殺予防とは、

「危険な子どもを発見して、専門家へつなぐ」

だけではありません。

普段から、

困ったときにSOSを出しやすい環境をつくっておくこと

まで含まれています。

日本でも長期休業明けの見守りが進められている

もちろん、日本でもさまざまな対策が進められています。

文部科学省は2026年7月、全国の教育委員会や学校等に対して、長期休業明けを見据えた児童生徒の自殺予防について通知しています。

そこでは、

など、多面的な取り組みが求められています。

したがって、日本に対策がないわけではありません。

今後さらに重要になるのは、こうした仕組みを、

一人ひとりの子どもの「学校へ戻りにくさ」にどう落とし込んでいくのか

という部分ではないでしょうか。

「学校へ行くか、休むか」の二択にしない

夏休み明けに子どもから、

「学校に行きたくない」

と言われると、保護者の方も迷うと思います。

「無理にでも行かせたほうがいいのだろうか」

「休ませたら、そのまま行けなくなってしまうのではないか」

「どこまで本人の希望を聞けばいいのだろう」

こうした悩みは自然なものです。

しかし、海外の取り組みを見ると、

「行く」「休む」の二択だけで考える必要はない

ことが分かります。

まず、

「学校の何が一番つらい?」

と問題を小さく分けて考えてみます。

例えば、

などです。

「全部しんどい」という場合でも、一つずつ確認すると負担の強さが違う場合があります。

原因が少しずつ具体的になれば、対策も具体的になります。

例えば、

などです。

認知行動療法では「学校に行けない」を具体的に整理する

こうした考え方は、認知行動療法(CBT)の考え方ともよく似ています。

認知行動療法では、

「学校に行けない」

という大きな問題をそのまま扱うだけではなく、

どの場面で、何を考え、どのような感情や身体反応が起こり、その結果どのような行動をしているのか

を具体的に整理します。

例えば、

「教室に入る直前になると、『みんなに変に思われる』と考える」

不安が強くなる

動悸や腹痛が起こる

教室へ入ることを避ける

一時的に安心する

翌日はさらに教室へ入りづらくなる

という悪循環が起きているかもしれません。

一方で別の子どもでは、

「勉強についていけない」

「休み時間に一人になる」

「先生に怒られるのが怖い」

など、まったく別の仕組みが関係していることもあります。

そのため、「不登校だからこの方法」と一律に考えるのではなく、その子に何が起きているのかを整理することが大切です。

「登校できること」だけをゴールにしない

もちろん、学校へ行けるようになることは大切な目標の一つです。

しかし、

「登校できた=すべて解決」

とも限りません。

毎日学校へ行けていても、

「誰にも相談できない」

「ずっと緊張している」

「休み時間が怖い」

「勉強についていけない」

「毎朝、学校がなくなればいいと思っている」

という子どももいるかもしれません。

反対に、一時的に登校が難しくても、家族や学校、専門家とつながりながら、少しずつ生活を立て直している子どももいます。

だからこそ、

出席・欠席だけを見るのではなく、その子がどの程度安心して生活できているのか

困ったときに助けを求められる人がいるのか

という視点も大切です。

夏休み明けに「学校に行きたくない」と言われたら

最初から解決策を提示する必要はありません。

まずは、

「何が一番しんどそうか、一緒に考えてみようか」

というところから始めてもよいでしょう。

本人にも分からなければ、それでも構いません。

朝なのか。
教室なのか。
友人関係なのか。
勉強なのか。
先生なのか。
進路なのか。
それとも、学校とは関係なく心身そのものが疲れているのか。

少しずつ整理していくことで、必要な支援が見えてくることがあります。

大切なのは、

「みんな嫌でも行っている」

「休み癖がついた」

「甘えている」

と早い段階で結論づけないことです。

海外の取り組みから見えてくるのは、子どもだけを変えようとするのではなく、

本人・家庭・学校・専門家が一緒に「どうすればこの子が少ない負担で生活を立て直していけるのか」を考える

という姿勢です。

新学期は、必ずしも「夏休み前と同じ状態へ一気に戻す」必要はありません。

その子に合った戻り方を、一緒に探すこともできます。

よくあるご質問

Q1.「学校に行きたくない」と言われたら、休ませたほうがよいですか?

一律に「休ませるべき」「行かせるべき」と決めることは難しいです。

まずは、学校生活の何が負担なのか、心身の状態がどの程度なのかを確認することが大切です。

場合によっては休養が必要なこともありますし、学校側と相談しながら登校時間や過ごし方を調整する方法もあります。

重要なのは、単純な出席・欠席の判断だけで終わらず、なぜ学校へ行くことが難しくなっているのかを整理することです。

Q2.本人が「理由は分からない」と言います。それでもカウンセリングを受けられますか?

はい。ご相談いただけます。

「学校に行きたくないけれど、自分でも理由が分からない」ということは珍しくありません。

カウンセリングでは、最近の生活、学校で特につらい場面、考えていること、感情、身体反応、行動などを一緒に確認しながら、少しずつ整理していきます。

最初から本人が上手に説明できる必要はありません。

Q3.保護者だけで相談することはできますか?

お子さまの年齢やご相談内容にもよりますが、保護者の方からご相談いただくことも可能です。

特に、

「子どもにどのように声をかければよいか分からない」

「学校を休ませるべきか迷っている」

「学校との連携をどのように進めればよいか悩んでいる」

といった場合には、保護者の方と状況を整理し、対応方法を一緒に考えることもできます。

認知行動療法カウンセリングセンターへのご相談

認知行動療法カウンセリングセンターでは、子どもの不登校、学校への不安、対人関係、強い緊張、不安症状、気分の落ち込みなどについて、認知行動療法の考え方を用いたカウンセリングを行っています。

対面カウンセリングのほか、全国からオンラインでのご相談も可能です。

現在、対面カウンセリングは、

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オンラインカウンセリングについても、全国からご利用いただけます。

まずは事前無料相談からでもご利用いただけます

「子どもの状態がカウンセリングの対象になるのか分からない」

「本人が受けるべきか、まず保護者が相談するべきか迷っている」

「オンラインと対面のどちらがよいか相談したい」

という場合には、約10分間の事前無料相談もご利用いただけます。

無理に継続をお願いすることはありませんので、まずは現在の状況についてお気軽にご相談ください。

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おわりに

夏休み明けに学校へ戻ることがつらくなるのは、単純な「やる気」の問題とは限りません。

新学期になることで、勉強、人間関係、生活リズム、集団生活、評価、進路など、夏休み中には少なくなっていた多くの負荷が一度に戻ってきます。

だからこそ、

「学校に行きなさい」と伝える前に、「何が学校へ行くことを難しくしているのだろう」と考えてみる。

そこから支援が始まることがあります。

学校へ戻ること以上に大切なのは、子どもが一人で抱え込まず、

「困ったときには誰かに相談してもいい」

と思える環境をつくることです。

認知行動療法カウンセリングセンターでも、お子さまやご家族と一緒に、現在起きている問題を具体的に整理し、その子に合った方法を考えていきます。

この記事の執筆者・監修者

岡村 優希

代表

岡村優希YUUKI OKAMURA
資格
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
学会
日本認知療法・認知行動療法学会一般社団法人、日本認知・行動療法学会
広島県出身。 広島の私設相談室や医療機関で、うつ症状・不安症・強迫症などに苦しむ方々に認知行動療法を提供してきました。 その後、滋賀県の認知行動療法専門機関や医療機関で、さまざまな困りごとを抱える方々に対して認知行動療法の支援を行い、長浜市ひきこもり支援員としてひきこもり相談や滋賀県スクールカウンセラーとして児童思春期臨床にも携わりました。そして、2022年より株式会社CBTメンタルサポートの代表取締役として、認知行動療法の専門家養成やカウンセリングルームの運営を行っております。
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