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コラム

2026/09/22

認知行動療法とは?「心の設計図」を描くカウンセリング|専門家対談

岡村 優希

執筆・監修者:

岡村優希(YUUKI OKAMURA)

こんにちは、認知行動療法カウンセリングセンターです。

「認知行動療法は、ネガティブな考えをポジティブに変える方法ですか?」

「決められた課題をこなして、行動を変えていくカウンセリングなのでしょうか?」

認知行動療法について、このようなイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、実際の認知行動療法では、考え方や行動を変える前に、まず「その方に何が起きているのか」を丁寧に整理します。

今回は、認知行動療法カウンセリングセンター代表の岡村優希と、認知行動療法カウンセリングセンター長の喜田智也が、認知行動療法の基本的な考え方について対談しました。

認知行動療法を「心の設計図を描くこと」と表現する二人。その言葉には、どのような意味が込められているのでしょうか。

対談者

岡村優希
株式会社CBTメンタルサポート代表。認知行動療法カウンセリングセンターを運営し、認知行動療法の実践および専門家養成に取り組む。

喜田智也
株式会社ポルトクオーレ代表。認知行動療法カウンセリングセンター長。カウンセリング、心理検査、専門家支援など幅広い領域で活動している。

認知行動療法は「心の設計図」を描くところから始まる

岡村:
喜田先生は、認知行動療法をどのようなものとして捉えていますか。

喜田:
私の中では、認知行動療法は、まず「設計図を描く」ことから始まるものです。

認知行動療法という名前から、「認知を変える」「行動を変える」といった部分に注目されやすいのですが、その前に、その方がどのような状況にあり、何に困り、どのようなことが繰り返されているのかを理解する必要があります。

設計図があって初めて、「では、どこから取り組んでいくとよいのか」を一緒に考えられるのだと思います。

岡村:
本当にそうですね。カウンセリングで扱う心の動きは、基本的に目には見えません。だからこそ認知行動療法では、考えやイメージ、感情、身体反応、行動などを言葉や記録にしながら、できるだけ見える形にしていきます。

私は「心のレントゲンを撮るようなもの」と表現することもあります。何となくつらい、何度も同じことで悩むという状態をそのままにするのではなく、「いつ、どこで、誰といるときに、何が起きているのか」と少しずつ整理していくわけです。

「ネガティブな考えをポジティブに変える」だけではない

喜田:
認知行動療法について、「ネガティブな考えをポジティブに変える方法」というイメージを持っている方もいらっしゃいますよね。

岡村:
そうですね。ただ、実際には、つらい出来事を無理に前向きに考え直すことが目的ではありません。

認知とは、ある状況で浮かぶ考えやイメージ、物事の受け取り方を指します。たとえば、人前で話すときに「失敗したら評価が下がる」と考える方もいれば、「緊張していることに気づかれたら恥ずかしい」と考える方もいます。

同じ「人前で話すのが怖い」という悩みでも、そのときに起きていることは一人ひとり違います。大切なのは、考えを一律にポジティブへ変えることではなく、その方にどのような受け取り方や反応の流れが生じているのかを理解することです。

喜田:
「気にしないようにしましょう」「前向きに考えましょう」と言われても、それが簡単にできるのであれば、そもそも長く困ってはいないかもしれません。

まずはご本人の体験を丁寧に伺い、一緒に整理することが大切ですね。

岡村:
はい。そのうえで、今の受け取り方が実際の状況とどの程度合っているのか、ほかの捉え方もあり得るのかを検討することはあります。

ただし、カウンセラーが「このように考えるのが正解です」と押しつけるものではありません。ご本人が納得できる、現実的でバランスの取れた見方を一緒に探していきます。

個人だけでなく、環境との関係も見る

喜田:
認知行動療法というと、その方の考え方や行動だけを見るものと思われることもあります。しかし、環境との関係も非常に重要ですよね。

岡村:
そうですね。困りごとは、その人の内側だけで起きているとは限りません。

ある場所では問題なく過ごせるのに、特定の職場や人間関係では強い緊張が生じることがあります。自宅では落ち着いていても、電車や人混みでは不安が高まる方もいます。忙しい時期だけ調子を崩すこともあれば、周囲の反応によって特定の行動が繰り返されやすくなることもあります。

ですから、認知行動療法では「その人がどう考えているか」だけではなく、「どのような環境で、どのような相互作用が起きているのか」も見ていきます。

喜田:
本人だけに変化を求めるのではなく、必要に応じて環境を調整したり、周囲との関わり方を考えたりすることもあるわけですね。

岡村:
はい。たとえば、負担の大きい状況が続いているのであれば、考え方を変えることだけが答えではありません。生活の組み立て方や仕事の進め方、周囲への相談方法など、環境側に働きかける方が有効な場合もあります。

「本人の性格に原因がある」と決めつけず、個人と環境の両方を見ることが大切です。

ケースフォーミュレーションは、診断名を確認するだけではない

喜田:
このように、困りごとがどのような仕組みで続いているのかを整理することを、専門的には「ケースフォーミュレーション」と呼びます。

少し聞き慣れない言葉ですが、まさに支援のための設計図をつくる作業ですね。

岡村:
そうですね。ケースフォーミュレーションは、「不安が強い」「強迫症である」「気分が落ち込んでいる」と確認して終わるものではありません。

診断名や症状を知ることは大切ですが、それだけでは、その方の日常生活で実際に何が起きているのかまでは分かりません。

私が一つの目安として考えているのは、カウンセラーがその方の困っている場面を具体的に思い浮かべられるくらい、丁寧に理解できているかどうかです。

どのようなきっかけがあり、その瞬間に何を考え、身体がどう反応し、どのように行動したのか。そして、その行動によって一時的に何が楽になり、長い目で見ると何が続きやすくなっているのか。そこまで具体的に見えてくると、初めてその方に合った支援を考えやすくなります。

喜田:
家を建てるときも、希望や生活の仕方を聞かずに、いきなり工事を始めることはありません。どのような家で暮らしたいのか、土地や予算にどのような条件があるのかを確認し、設計図を描きます。

カウンセリングも同じで、最初に丁寧に理解することが、その後の安心や納得につながると思います。

丁寧に質問することと、気持ちに寄り添うことは両立する

岡村:
困りごとを具体的に理解しようとすると、カウンセラーから細かく質問することもあります。そのため、「そこまで聞かれるのだろうか」と不安に感じる方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、細かく伺うことは、気持ちを置き去りにすることとは違います。

喜田:
そうですね。受容や共感は、カウンセリングの大切な土台です。そのうえで、ご本人の困りごとを減らすために必要なことを、一緒に確認していきます。

もちろん、話したくないことを無理に話す必要はありません。最初からきれいに説明できなくても大丈夫です。話せる範囲から少しずつ整理し、必要に応じて記録なども使いながら理解を深めていきます。

岡村:
カウンセラー側の理解が、ご本人の実感と合わないこともあります。その場合は「ここは少し違う」と言っていただき、設計図を修正していくことが大切です。

認知行動療法の設計図は、カウンセラーが一方的につくって渡すものではありません。ご本人とカウンセラーが、対話を重ねながら一緒につくっていくものです。

設計図をつくるのは、変化につながる入口を見つけるため

喜田:
設計図をつくった後は、どのように支援へつなげていくのでしょうか。

岡村:
設計図は、つくること自体が目的ではありません。現在の状況が見えてきたら、「どこであれば少し変えられそうか」「何を試すと負担が減りそうか」を一緒に考えます。

変える対象は、考え方かもしれませんし、行動かもしれません。生活環境や周囲との関わり方を調整することかもしれません。

また、最初から大きな変化を目指すとは限りません。今の生活の中で実行できそうな小さな一歩を考え、実際に試してみます。その結果を振り返り、合わなければ方法を調整します。

喜田:
認知行動療法では、カウンセリングの中だけで答えを出すというより、日常生活の中で試しながら、その方に合う方法を見つけていくのですね。

岡村:
そうですね。うまくいかなかった場合も、それは失敗ではなく、大切な情報です。

取り組みが大きすぎたのか、タイミングや環境が合わなかったのか、別の方法が必要なのかを検討できます。

設計図も支援方法も、一度決めて終わりではありません。実際の変化やご本人の感覚に合わせて、少しずつ更新していきます。

認知行動療法を検討している方へ

喜田:
最後に、認知行動療法を受けようか迷っている方へ、岡村先生からお伝えしたいことはありますか。

岡村:
「何に困っているのか、自分でもうまく説明できない」という状態でも問題ありません。

同じことを繰り返してしまうけれど理由が分からない、何を変えればよいのか見えないというときには、まず現在起きていることを一緒に整理することが最初の一歩になります。

認知行動療法は、ご本人の考え方を否定したり、カウンセラーが正しい答えを教えたりするものではありません。今どこにいて、どこへ向かいたいのか、そのために何ができそうかを一緒に考える方法です。

喜田:
すぐに変化を求めるのではなく、まずは安心して話せるところから始めることも大切ですね。

岡村:
はい。認知行動療法カウンセリングセンターでは、対面とオンラインの両方でご相談をお受けしています。

カウンセリングで相談できる内容か分からない場合や、利用方法、料金、進め方などを確認したい場合には、約10分間の事前無料相談もご利用いただけます。

無理に利用を勧めるものではありませんので、まずはご自身に合いそうかを確かめる機会としてお使いください。

まとめ

認知行動療法は、単にネガティブな考えをポジティブに変える方法ではありません。

どのような状況で、どのような考え、感情、身体反応、行動が生じ、それらが環境とどのように影響し合っているのかを整理します。そのうえで、ご本人とカウンセラーが「心の設計図」を共有し、生活の中で無理なく取り組める方法を一緒に探していきます。

自分を変えなければならないと焦る前に、まずは今、何が起きているのかを見える形にしてみる。そのこと自体が、困りごとから少し距離を取り、次の一歩を考えるきっかけになるかもしれません。

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認知行動療法カウンセリングセンター公式サイト
https://cbt-counseling.jp/

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この記事の執筆者・監修者

岡村 優希

代表

岡村優希YUUKI OKAMURA
資格
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
学会
日本認知療法・認知行動療法学会一般社団法人、日本認知・行動療法学会
広島県出身。 広島の私設相談室や医療機関で、うつ症状・不安症・強迫症などに苦しむ方々に認知行動療法を提供してきました。 その後、滋賀県の認知行動療法専門機関や医療機関で、さまざまな困りごとを抱える方々に対して認知行動療法の支援を行い、長浜市ひきこもり支援員としてひきこもり相談や滋賀県スクールカウンセラーとして児童思春期臨床にも携わりました。そして、2022年より株式会社CBTメンタルサポートの代表取締役として、認知行動療法の専門家養成やカウンセリングルームの運営を行っております。
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