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コラム

2026/10/17

皮膚むしり・爪噛みへのカウンセリング

岡村 優希

執筆・監修者:

岡村優希(YUUKI OKAMURA)

こんにちは。認知行動療法カウンセリングセンターです。

「気づいたら皮膚をむしってしまっている」
「爪を噛む癖をやめたいのに、なかなかやめられない」
「何度もやめようとしたけれど、いつの間にか繰り返している」

このようなお悩みはありませんか?

皮膚むしりや爪噛みは、一般的には「癖」として捉えられることもあります。しかし、本人がやめたいと思っていても繰り返してしまい、皮膚に傷ができたり、爪が変形したり、日常生活に支障が生じたりする場合もあります。

こうした行動は、身体集中反復行動(BFRB:Body-Focused Repetitive Behaviors)と呼ばれる行動の一つです。

皮膚むしりや爪噛みについては、「ストレスが原因なのではないか」「意識して我慢すればやめられるのではないか」と考えられることもあります。

もちろん、ストレスが関係している場合もありますが、それだけでは説明できないことも少なくありません。

今回は、皮膚むしりや爪噛みが繰り返される理由と、認知行動療法による具体的な対処法について解説します。

1.皮膚むしり症とは?

皮膚むしり症とは、自分の皮膚を繰り返しむしったり、引っかいたりすることで皮膚に傷が生じ、やめようとしても繰り返してしまう状態です。

例えば、次のような行動が見られることがあります。

皮膚むしりが続くと、傷や出血、色素沈着、瘢痕などが生じることがあります。

また、傷を人に見られることが気になったり、皮膚をむしることに長い時間を費やしてしまったりする方もいます。

ただし、皮膚を触ったり、かさぶたを剥がしたりする行動があるからといって、必ずしも皮膚むしり症に該当するわけではありません。

行動の頻度や皮膚への影響、本人の困りごと、生活への支障などを踏まえて判断する必要があります。

なお、かゆみや皮膚疾患が関係している場合には、皮膚科での診察や治療も重要になります。

2.爪噛みとは?大人になってもやめられない理由

爪噛みは、爪を繰り返し噛んでしまう行動です。

子どもの頃から続いている方もいれば、大人になっても習慣として残っている方もいます。

例えば、次のような場面で起こることがあります。

爪噛みが続くと、爪の変形や周囲の皮膚の傷、歯への負担などが生じる場合があります。

また、人前で爪を噛んでしまうことが気になり、悩んでいる方もいらっしゃいます。

一方で、爪噛みそのものが必ずしも治療を必要とする問題というわけではありません。

本人がどの程度困っているのか、身体的な影響や生活への支障があるのかを確認することが大切です。

3.皮膚むしりや爪噛みは、なぜやめられないのか?

皮膚むしりや爪噛みについて、「ストレスが原因」と説明されることがあります。

確かに、ストレスや不安、緊張などが行動のきっかけになることはあります。

しかし、行動が始まった理由と、現在その行動が続いている理由は、必ずしも同じではありません。

例えば、最初は緊張したときに爪を噛んでいたとしても、繰り返しているうちに、特に緊張していない場面でも爪を噛むようになる場合があります。

皮膚むしりについても、最初はニキビやかさぶたが気になって触っていたのに、その後、皮膚の凹凸をなくすことや、むしったときの感覚が行動を繰り返すきっかけになることがあります。

① むしったり噛んだりしたときの感覚

皮膚をむしったり、爪を噛んだりしたときに、一時的なすっきり感や満足感が生じる場合があります。

こうした感覚が、行動を繰り返すことに関係している可能性があります。

② 気になる部分を整えたくなる

皮膚の小さな凹凸や爪の引っかかりが気になり、それをなくそうとして行動が始まる場合があります。

しかし、むしったり噛んだりしたことで新たな凹凸や引っかかりが生じ、再び気になるという循環が起こることもあります。

③ 無意識のうちに習慣化している

皮膚むしりや爪噛みは、特別な準備がなくても短時間で行うことができます。

そのため、テレビを見ているときや考え事をしているときなど、本人が特に意識していない場面でも行動が起こることがあります。

④ ストレスや不安が影響している

緊張や不安、ストレスなどが行動を増やす要因になっている場合もあります。

ただし、ストレスがあるから必ず行動が起こるわけでも、ストレスがなくなれば必ず改善するわけでもありません。

このように、皮膚むしりや爪噛みには複数の要因が関係している場合があります。

そのため、一つの原因だけに注目するのではなく、行動が繰り返される仕組みを多角的に理解することが重要です。

4.皮膚むしり・爪噛みへの認知行動療法とは?

認知行動療法では、まず現在の行動パターンを整理するところから始めます。

例えば、皮膚むしりであれば、次のようなことを確認していきます。

爪噛みについても同様です。

同じ爪噛みであっても、緊張したときに起こる方と、退屈な時間に無意識に起こる方では、必要な対策が異なる可能性があります。

こうした行動の仕組みを整理することを、認知行動療法ではケースフォーミュレーションと呼びます。

本人のお困りごとがどのような要因によって続いているのかを整理し、それに合わせた支援方法を検討していきます。

5.皮膚むしり・爪噛みを減らすための具体的な対処法

① 行動が起こる場面を記録する

最初に取り組みやすい方法の一つが、行動の記録です。

例えば、爪を噛んでしまったときに、いつ、どこで、何をしていたのかを簡単に記録します。

項目記録例
時間夜9時頃
場所自宅のリビング
直前の行動テレビを見ていた
起きた行動爪を噛んだ
そのときの状態退屈していた
行動の後爪の引っかかりが気になった

こうした記録を続けることで、行動が起こりやすい状況が見えてくる場合があります。

ただし、記録そのものが負担になる場合には、無理のない範囲で行うことが大切です。

② 無意識の行動に気づきやすくする

皮膚むしりや爪噛みでは、行動を始めてから気づくこともあります。

そのため、まずは「今、やろうとしている」「今、やっている」と気づける機会を増やすことが大切になります。

例えば、爪噛みの場合には、マニキュアなどを使って普段と異なる感覚を作り、爪を口に運んだことに気づきやすくする方法があります。

皮膚むしりの場合には、皮膚を触りやすい場面を確認し、手が皮膚に向かうタイミングに気づくための工夫を考えます。

重要なのは、最初から完璧に行動をなくそうとするのではなく、行動に気づける機会を少しずつ増やしていくことです。

③ 行動が起こりにくい環境を作る

皮膚むしりや爪噛みでは、環境を調整することも対策の一つになります。

例えば、次のような工夫が考えられます。

皮膚むしりの場合

爪噛みの場合

こうした方法は、単に我慢することだけに頼らず、行動が起こりにくい仕組みを作るためのものです。

ただし、環境調整だけで十分な改善が得られるとは限らないため、ほかの方法と組み合わせることもあります。

④ ハビットリバーサル法(習慣逆転法)

皮膚むしりや爪噛みなどの身体集中反復行動に対して用いられる行動療法の一つに、ハビットリバーサル法(習慣逆転法)があります。

これは、行動に気づく練習と、その行動と両立しにくい別の行動を行う練習などを組み合わせる方法です。

例えば、爪を噛もうとしていることに気づいたときに、両手を膝の上に置くなど、爪を口に運ぶ動作と両立しにくい行動を一定時間行う方法があります。

皮膚むしりについても、手が皮膚に向かう動きに気づいた際に、別の行動に切り替える練習を検討します。

重要なのは、単に「やめる」と決めることではなく、行動が起こりそうな場面で具体的に何をするのかを決め、練習していくことです。

実際には、本人の行動パターンや生活状況に合わせて方法を調整していきます。

⑤ ストレスや不安への対処も並行して行う

皮膚むしりや爪噛みがストレスや不安と関係している場合には、それらへの対処も重要です。

例えば、仕事や学校での緊張、人間関係の悩み、生活上の負担などが行動に影響している場合もあります。

そのような場合には、ストレスへの対処方法を増やしたり、生活環境を調整したりすることが役立つ可能性があります。

行動そのものへの対策と、行動に影響している要因への対策を組み合わせることが大切です。

6.「やめよう」と思っても繰り返してしまうときは?

皮膚むしりや爪噛みにお困りの方の中には、これまで何度もやめようと努力してきた方もいらっしゃると思います。

しかし、無意識に行っている行動や、特定の感覚によって繰り返されている行動については、意識して我慢するだけでは難しいことがあります。

例えば、皮膚の凹凸が気になってむしり始めた場合、むしったことで新たな凹凸が生じ、さらに気になるという循環が起こることもあります。

爪噛みについても、噛んだことで爪の形が変わり、その部分が気になって再び噛んでしまう場合があります。

こうした場合には、単に行動を禁止するのではなく、繰り返される仕組みそのものを整理することが大切です。

また、一度行動をしてしまったからといって、それまでの取り組みが無駄になるわけではありません。

どのような場面で行動が起こったのかを振り返り、次の対策につなげていくことが重要です。

7.子どもの皮膚むしりや爪噛みへの対応

子どもが皮膚をむしったり、爪を噛んだりしていると、保護者の方は心配になると思います。

「やめなさい」「また噛んでいるよ」と声をかけたくなることもあるでしょう。

しかし、本人もやめたいと思っている場合、繰り返し注意されることが負担になる可能性もあります。

まずは、本人がどのようなことに困っているのか、どのような場面で行動が起こりやすいのかを確認することが大切です。

そのうえで、年齢や発達段階に合わせて、行動に気づきやすくする工夫や環境調整などを検討します。

必要に応じて、保護者の方と協力しながら対応を進めることもあります。

8.皮膚むしり・爪噛みに関するよくある質問(Q&A)

Q1.皮膚むしり症は自然に治りますか?

症状の経過には個人差があり、自然に軽減する場合もあります。

一方で、長期間続いたり、皮膚への影響や生活上の困りごとが大きくなったりする場合もあります。

傷が繰り返し生じる、やめようとしても難しいなどの場合には、専門家への相談をご検討ください。

Q2.爪噛みは大人になってからでも改善できますか?

大人になってからでも、行動パターンを整理し、対処法を練習することは可能です。

長年続いている習慣であっても、どのような場面で起こりやすいのかを確認することで、対応の手がかりが見つかる場合があります。

Q3.皮膚むしりや爪噛みはストレスが原因ですか?

ストレスが関係している場合もありますが、それだけが原因とは限りません。

退屈な時間、特定の感覚、習慣化した行動など、複数の要因が関係している場合があります。

そのため、ストレスへの対処だけでなく、現在の行動パターンを把握することが大切です。

Q4.無意識に皮膚をむしってしまう場合でも改善できますか?

無意識に行っている場合にも、行動に気づきやすくする練習や環境調整などを検討できます。

まずは、どのような場面で行動が起こっているのかを確認し、気づくための手がかりを増やしていきます。

Q5.爪噛みをやめるためにマニキュアを塗るのは効果がありますか?

マニキュアなどによって普段と異なる感覚を作ることで、爪を噛もうとしていることに気づきやすくなる場合があります。

ただし、それだけで十分な改善が得られるとは限りません。

行動が起こる状況に応じて、ほかの対処法と組み合わせることが大切です。

Q6.皮膚むしりには皮膚科とカウンセリングのどちらがよいですか?

皮膚に傷や炎症、かゆみなどがある場合には、皮膚科での診察が重要です。

一方で、皮膚をむしる行動そのものが繰り返されている場合には、認知行動療法などの心理的支援が役立つ可能性があります。

必要に応じて、医療機関での治療と心理的支援を組み合わせることも考えられます。

Q7.皮膚むしりや爪噛みのカウンセリングは何回くらい必要ですか?

必要な回数は、行動の頻度や経過、生活への影響、ほかのお困りごとの有無などによって異なります。

そのため、一律に何回で改善するとお伝えすることは難しいですが、初期のカウンセリングで現状を整理し、目標や取り組み方を相談していきます。

Q8.オンラインカウンセリングでも相談できますか?

オンラインカウンセリングでも、行動が起こる状況の整理や対処法の検討などを行うことができます。

ただし、皮膚の状態や症状によっては、医療機関での評価や治療が必要な場合もあります。

9.皮膚むしり・爪噛みでお悩みの方へ

皮膚むしりや爪噛みは、本人がやめたいと思っていても、繰り返してしまう場合があります。

大切なのは、単に我慢することだけではなく、行動がどのような仕組みで続いているのかを理解することです。

認知行動療法では、行動が起こる場面や、その前後に生じていることを整理し、一人ひとりに合った対処法を考えていきます。

これまで何度もやめようとしてきた方も、別の視点から取り組み方を検討できるかもしれません。

認知行動療法カウンセリングセンターでは、皮膚むしりや爪噛みなど、繰り返してしまう行動についてのご相談にも対応しています。

お一人で抱えず、必要に応じて専門家への相談をご検討ください。


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この記事の執筆者・監修者

岡村 優希

代表

岡村優希YUUKI OKAMURA
資格
公認心理師、臨床心理士、認定行動療法士
学会
日本認知療法・認知行動療法学会一般社団法人、日本認知・行動療法学会
広島県出身。 広島の私設相談室や医療機関で、うつ症状・不安症・強迫症などに苦しむ方々に認知行動療法を提供してきました。 その後、滋賀県の認知行動療法専門機関や医療機関で、さまざまな困りごとを抱える方々に対して認知行動療法の支援を行い、長浜市ひきこもり支援員としてひきこもり相談や滋賀県スクールカウンセラーとして児童思春期臨床にも携わりました。そして、2022年より株式会社CBTメンタルサポートの代表取締役として、認知行動療法の専門家養成やカウンセリングルームの運営を行っております。
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